10月1日に電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(通称:FIT法)等の一部を改正する法律」の一部が施行されました。
これにより、固定価格買い取り制度における賦課金減免制度が見直され、平成29年度の認定分の申請時(2016年11⽉)から⾒直し後のルールが適⽤されることとなります。
賦課金減免制度とは?というところから、この改正でどう変わるのかについてご紹介します。
賦課金減免制度とは?
再生可能エネルギーの普及を促進するため、今はまだ発電コストが高い再エネ電気の買取に要する費用を、電気を利用する全ての人から電気料金の一部として集めた「再エネ賦課金※(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」でまかなっています。
電力使用量が極めて大きい事業者には負担が重くなるため、特例として一定の要件を満たす事業者(国の認定が必要)については賦課金を減免する制度が設けられました。これが「賦課金減免制度」です。
賦課金は電気代とともに請求されるので、平たく言えば「電気を多く使う事業者の電気代を安くする」制度ということになります。
FIT電気とは?注目キーワードを解説>固定価格買取制度(FIT制度)とは?
改正前の減免制度の特例対象
対象事業の認定(改正前)
- 製造業は、事業者(法人ごと)の対象事業の原単位(売上高千円当たりの電力使用量(kWh))が製造業における平均値の8倍※1を超えること。
非製造業は、事業者(法人ごと)の対象事業の原単位(売上高千円当たりの電力使用量(kWh))が製造業以外の業種における平均値の14倍※1を超えること。
(事業としての原単位であり、事業所としての原単位ではありません)
対象事業所の認定(改正前)
- 事業所ごとの対象事業の電気使用量が100万kWhを超えること
- 対象事業の電気使用量が、事業所全体の電気使用量の過半を超えること
平成28年度分は製造業の平均原単位が0.7kWhで、その8倍である5.6kWhとなります。
改正前の賦課金の軽減割合
賦課金の特例に係る認定を受けた事業所に対し、再エネ賦課金の80%を減免。
なぜ賦課金減免制度が見直されるのか?
「固定価格買取制度の買取電力量まとめ(2016年5月末)」の記事にあるグラフを見ていただく分かりますが、再生可能エネルギー発電の買取電力量は年々増加しています。
再エネ賦課金も増加することが見込まれるため、制度を持続的に運用する観点から、そして減免対象とならない家庭や事業者から減免制度の維持に理解が得られるよう、見直しが行われるものです。
賦課金減免制度の見直し概要
認定基準
原単位(売上高千円当たりの電力使用量(kWh))の改善のための取り組みを行っていることが条件に加えられました。
認定事業者に対して適用される減免率
これまで一律で8割の減免でしたが、業種や原単位改善の取り組み状況に応じて異なる減免率が適用されます。
優良基準を満たす※4 | 優良基準を満たさない※4 | |
---|---|---|
製造業など ※1、※2 | 8割 | 4割 |
非製造業 ※1、※2 | 4割(経過措置あり※3) | 2割 |
※1 「製造業など」には、農業・林業、漁業、鉱業・採⽯業・砂利採取業が含まれます。
※2 事業の種類は⽇本標準産業分類の細分類を基に区分されます。
※3 平成28年度において現制度の適⽤を受けている事業所で、優良基準を満たす場合については、減免率を平成29年度8割、平成30年度6割とする経過措置が設けられます。
※4 優良基準を2事業年度連続で満たさない場合は認定基準を満たさない判定となります。
優良基準とは?
認定基準に「原単位の改善のための取組を行う者」という項目が追加されましたが、この取り組みがきちんと行われているか、原単位(売上高千円当たりの電力使用量(kWh))の5事業年度の推移位から判断されます。
直近事業年度において、以下のいずれかの要件を満たす場合は優良基準を満たすと認められます。
【基準1】
平成28年11⽉1⽇前に終了した直近の事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が99%以下であること。
【基準2】
平成28年11⽉1⽇前に終了した直近の事業年度⼜はその前事業年度において、各事業年度の原単位が、それぞれの事業年度の前年度の原単位以下であり、かつ、平成28年11⽉1⽇前に終了した直近の事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の値が105%以下であること。
計算例1
平成 23年度 |
平成 24年度 |
平成 25年度 |
平成 26年度 |
平成 27年度 |
|
---|---|---|---|---|---|
原単位 | 10.8 | 11 | 10.8 | 10.2 | 10.3 |
前年度 変化率 |
– | 101.9% | 98.2% | 94.4% | 101.0% |
- 前年度変化率の平均=(101.9% × 98.2% × 94.4% × 101.0%)1/4 = 98.8%
→過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が99%以下で、基準1を満たすため、優良基準を満たします。
計算例2
平成 23年度 |
平成 24年度 |
平成 25年度 |
平成 26年度 |
平成 27年度 |
|
---|---|---|---|---|---|
原単位 | 10.95 | 11.01 | 10.32 | 10.22 | 11.05 |
前年度 変化率 |
– | 100.55% | 93.73% | 99.03% | 108.12% |
- 前年度変化率の平均=(100.55% × 93.73% × 99.03% × 108.12%)1/4 = 100%(105%以下)
- 直近2事業年度の原単位の推移が、2事業年度連続して悪化していない
→基準2を満たすため、優良基準を満たします。
計算例3
平成 23年度 |
平成 24年度 |
平成 25年度 |
平成 26年度 |
平成 27年度 |
|
---|---|---|---|---|---|
原単位 | 10.95 | 11.01 | 10.32 | 10.22 | 18.90 |
前年度 変化率 |
– | 100.55% | 93.73% | 99.03% | 176.32% |
- 前年度変化率の平均=(100.55% × 93.73% × 99.03% × 176.32%)1/4 = 113%(105%超)
- 直近2事業年度の原単位の推移が、2事業年度連続して悪化していない
→2事業年度連続で原単位が悪化していないものの、直近事業年度に係る原単位変
化率が105%を超えるため、優良基準を満たしません。
認定基準・優良基準を満たさない場合の取り扱い
原単位の推移は悪化していたとしても、以下のいずれかを満たせば同等として認められます。
- 1.省エネ法に基づく「事業クラス分け評価制度」におけるSクラス相当であること。
- 減免認定申請を⾏う年度の7⽉末までに省エネ法に基づき提出された定期報告書において、①過去4事業年度分のエネルギー消費原単位の変化率の平均の値が99%以下であること、⼜は、②ベンチマーク指標を満たしていることが要件。
※事業者クラス分け制度の概要はこちらをご参照ください。 - 2.エネルギー消費原単位の改善に向けた計画を立て、その達成に向けて取り組んでいる事業者等であって、災害や経済環境の変化その他のやむを得ない事情で電力原単位の改善が実現していない事業者として経済産業大臣が認めた者であること。
-
- 申請事業における事業所が災害によって被災した場合、その事業所が①特定⾮常災害、②激甚災害、③災害救助法の適⽤を受けた地域に所在する場合には、各災害の指定期間内に属する事業年度については、当該事業所の売上⾼及び電気使⽤量を前年度と同じであるとみなして、原単位を再計算することが認められます。
- 本特例をご利⽤頂く場合には、災害の被害を受けた事業所が、指定等を受けた区域内に所在することを証明する書類(登記簿謄本等)及び指定を受けた災害の種類及び期間が分かる書類添付書類を提出することが求められます。
- なお、本特例は認定基準や優良基準を判断するためのものであり、災害によって被害を受けた事業所における申請事業の電気使⽤量が100万kWhを下回っている場合は申請要件を満たしません。
申請手続きも変更に
賦課金減免制度の変更に伴い、申請手続きも変わります。
原単位の改善の取り組みを行っているか、優良基準を満たすかどうか、など確認される項目が増えていますので、申請手続きに係る書類も大きく変更になることが予想されます。
申請手続きの変更に関する説明会も予定されておりますので、ご興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。