太陽光発電システムを導入し、余った電力を電力会社に売る「売電」。より多く発電し売電して大きな利益を得たいと考えると思いますが、発電した分を好きなだけ売れるわけではありません。電線内の電圧は一定の範囲にキープされており、頻繁に電圧が変化することを抑制する、電圧上昇抑制(電圧抑制ともいう)がされるからです。
電圧上昇抑制とは、簡単に言うと電圧の上昇を抑制するパワーコンディショナーの機能のこと、もしくは家庭の電圧が電線内の電圧を下回ってしまった状況のことを言います。この電圧上昇抑制により、思うように売電できなくなることがあるのです。
ここでは売電をするなら知っておくべき電圧上昇抑制についてご紹介します。

売電の仕組み

電圧上昇抑制について知るためには、まず売電の仕組みがどのようになっているのか知る必要があります。
売電とは前述の通り、自家発電した余剰電力を電力会社に売ることです。電力を売る場合にも、電力を買うときと同じように電線を使います。しかし売電用の電線が用意されているわけではありません。売電の際にも、普段買電する際に使っている電線を使います。
電気の特性のひとつに、「電圧が高いところから低いところへ流れる」というものがありますが、電力を売り買いする際もこの特性が活かされています。
自家で電気を買う場合は、電信柱と家との間につながっている電線の電圧よりも、家庭内の配電線の電圧を低くしておくことで、自然と電気が家庭に流れてくるようになります。反対に、自家発電した電力を売る場合には、電信柱と家をつなぐ電線の電圧を家庭の電圧よりも低くすることで電気を逆流させ、家庭の電気を売ることになります。これが売電の仕組みです。

電圧上昇抑制とはどのようなもの?

一般的に、家庭における電圧は平均100Vの交流電力で供給されており、主に電力会社側がトランスと呼ばれる装置を用いて電圧の調整をおこない送電しています。
日本には「電気事業法」という法律があり、その中で「電圧については100V供給の場合は101Vプラスマイナス6Vを超えない範囲内とする」と定められており、電圧は95V~107Vをキープしなくてはいけないことになっています。電力会社が電圧を調整する際には、トランスという変電装置が用いられます。トランスは電信柱の上部に設置されている箱のようなもののことで、このトランスにより、6600Vもの高圧で電気が流れている高圧線の電圧が、家庭に供給できる電圧である100V前後になるように調整されているのです。
太陽光発電により発電された電力を売る場合は、パワーコンディショナーと呼ばれる変電装置で家庭の電圧を高めることになります。しかし、上述の法律により、パワーコンディショナーによって高められる電圧も107Vが上限とされており、108V以上まで電圧を高めることができません。電線内の電圧が100Vだとして、パワーコンディショナーの電圧が107Vであれば売電をおこなうことができますが、電線内の電圧が107Vになると、電圧の高低がなくなり、売電できなくなってしまいます。
電気事業法に抵触しないためにパワーコンディショナーの電圧が107Vを超過しないように抑制することが電圧上昇抑制と呼ばれるもので、思い通りに売電がおこなえない理由となります。

電圧上昇抑制が起こりやすい状況とは

電圧上昇抑制が起こる(電線内の電圧が高まっている)状況は「電気の供給量に対する消費量が少ない」ときに起こります。このような状況には、起きやすい環境というものがあります。
電圧上昇抑制が起きやすい住宅の特徴は以下の通りです。

トランスが付いている電柱から遠い
基本的に売電がおこなわれると電線内の電圧が上昇します。家がトランスから遠い、また配電系統の末端にあるなどすると、電圧上昇抑制が起こりやすくなります。というのは、トランスに近い家で売電がおこなわれることで電線内の電圧が高くなってしまうからです。
引き込み点からパワーコンディショナーまでの距離が長い
引き込み点からパワーコンディショナーまでの距離(引き込み線の長さ)が長い場合、電圧降下が発生して家庭の電圧が低くなることがあります。引き込み線を太くするなどで対処することができます。
近辺の電力消費量が多い
近所に大きな工場があるなどする場合、工場の稼働時に大量の電力が消費され、電線内の電圧が低くなります。工場の稼働時は売電することができますが、逆に工場が休みであったりすると消費量が一気に下がるため、電線内の電圧が高くなってしまい電圧上昇抑制が発生してしまいます。

電圧上昇抑制対策

電圧上昇抑制は基本的に一時的なものですので、発生しても様子を見ているうちに解消することがあります。しかし前項で紹介した環境に家があるなど、頻繁に発生する場合は電力会社に相談し、電圧の調整をおこなってもらうようにしましょう。
また、自分でできる電圧上昇抑制対策もあります。

パワーコンディショナーの電圧設定値を上げる
パワーコンディショナーの電圧設定値を上げることも電圧上昇抑制対策のひとつです。しかし前述の電気事業法により、パワーコンディショナーの電圧を107V以上にすることはできません。また、一般的に家庭用の電気機器は100Vの対応となっており、100Vを大きく超えた電気を流してしまうと、機器の故障などにもつながりますので注意しましょう。
引き込み用の電信柱にトランスを新設する
家の引き込み用の電信柱(引き込み柱)にトランスを新設することで、電圧上昇抑制対策になるケースがあります。トランスを家の近くに新設することで、ほかの家で売電がおこなわれた場合にも、電線内の電圧の上昇を避けることができるからです。また、前項で紹介したように、引き込み線を太くするなども対策のひとつになります。
ただし、これらの工事に伴う費用は自己負担になりますので注意しましょう(費用は工事の規模により変動します)。
蓄電池を導入する
蓄電池を導入し、自家で発電した電力を売るのではなく自家で消費するという方法もあります。売電するわけではないので収入が得られることはなくなりますが、電気を買う量が減りますので、その分電気代を安く抑えることができるようになります。

電圧上昇抑制は電気事業法により制限されていることから発生するものです。そのため、法律が改正されることがない限り、今後も電圧上昇抑制は起こり続けるものであると考えられます。
これから太陽光発電システムを導入して売電による収入を得ようと検討中の方は、電圧上昇抑制のことをしっかり念頭に置き、注意する必要があるといえるでしょう。