発電した電力をすべて買い取ってもらえる全量買取制度ができたことにより、太陽光発電を利用した売電収益事業などがおこなえるようになりました。全量買取における太陽光発電は、大規模発電である「高圧」と小規模発電である「低圧」の2種類に分けられます。「高圧」と「低圧」では法制上の取り扱いが大きく違ってきます
「高圧」と「低圧」の違いを見ていきましょう。
高圧連系による大型発電所
電気事業法上、50キロワット以上の高圧連系の発電設備を用いる場合、発電用工作物(発電所)であると位置づけられ、「自家用電気工作物」と種別されます。キュービクル(変圧器)の設置など、経済産業省令で定められている技術基準に適合させ、電気工作物を安全に維持する義務が生じます。また、高圧連系用の月額基本料金を電力会社に支払わなくてはならず、管轄の消防署などに保安規定を定めて届け出をしなければいけません。
自家用電気工作物と種別されるため、設備の維持や運営のための電気主任技術者を選任する必要があり、工事は第一種電気工事士、もしくは認定電気工事従事者がおこなう必要があります。
このように、50キロワット以上高圧の太陽光発電設備を設置するには、「保安規定の届け出」「電気主任技術者の選任」などの義務が生じますし、工事も第一種電気工事または認定電気工事従事者である必要があるなど、規制が厳しくなると言えるでしょう。電気主任技術者には年間契約料を支払う必要があり、コストもかかってきます。
低圧連系による小型発電所
50キロワット未満の低圧連系の発電設備を用いる場合は、電事業法上、小出力発電設備であると位置づけられ、「一般用電気工作物」と種別されます。小出力発電設備の一般電気工作物であれば、維持管理の届け出や、電気主任技術者の選任をおこなう必要もありません。設置工事は第二種電気工事士でもおこえます。高圧連系で必要であるような資格や手続きが、低圧連系では必要ありません。そのため、形状的には100キロワットの発電設備が設置可能でも、手続きの煩雑さやコスト削減のため、あえて49.5キロワットなどの低圧連系の発電設備を設置するという方も多くいます。
高圧・低圧それぞれのメリット・デメリット
今度は、高圧連系低圧連系それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
【高圧連系のメリット】
- 1キロワットあたりのシステム単価が比較的安い
- 発電量が多いため、売電収益が大きい
【高圧連系のデメリット】
- 自家用電気工作物になるので、手続きなどが複雑化する
- 高額なキュービクルを設置する必要や、維持管理、管理委託などが必要なのでコストがかさむ
【低圧連系のメリット】
- 保安規定の届け出などが不要で、手続きが比較的簡単
- キュービクル、電力会社との接続協議などのコストが削減できる
- 設計、積算、工事が短期間で終わり、初期費用を抑えられる
【低圧連系のデメリット】
- 1キロワットあたりのシステム単価が比較的高い
- 小規模の場合、費用対効果が悪くなることがある
- 50kW程度まで設置できる広さの土地は、坪単価が高いケースが多い
以上のように、一言で太陽光発電による売電収益事業を始めると言っても、高圧と低圧の2種類があり、法制上の取り扱われ方や、事業主に課せられる義務、運営するためのコストなどが大きく違ってきます。売電収益事業を始める場合は、その点のことをしっかり念頭に置いて、きちんと検討しておこなう必要があると言えるでしょう。