2019年10月「出力制御の公平性の確保に係る指針」が改定され、すでに出力制御が実施されている九州電力でも、今後出力制御の運用が変わることが発表されました。

九州電力のシミュレーションでは、従来の運用よりも9%ほど出力制御量を低減できるとのこと。
その変更内容をご紹介します。

出力制御指示の流れ

すでに出力制御が実施されている九州電力の例で見ますと、出力制御は以下のような流れで実施されます。
前日
1.気象情報を受信(10時頃)
2.翌日の需要・再エネ出力の想定
3.翌日の発受電計画の策定
4.再エネの出力制御量の決定
5.出力制御の指示(オフライン事業者へ電話・メール等で連絡)(17時頃)

当日
6.気象情報を受信(4時頃)
7.6を受けて当日発受電計画を見直し
8.出力制御操作の実働

これまでの運用での課題

正確に予測するのは不可能なため、出力制御量を多めに設定していた

出力制御量の算出のためには、再エネの発電量がどれくらいか想定する必要がありますが、正確な予測は困難です。よって結構誤差が出てしまいます。
出力制御量が不足しないように、これまでは考えられる最大誤差をもとに出力制御量が算出されていました。
出力制御量=供給(火力発電など従来の電源の供給力+再エネの出力想定+最大誤差)ー需要

公平性ガイドラインの観点から柔軟な運用が困難であった

これまでの公平性ガイドラインをもとに、オンライン制御とオフライン制御の配分量を調整し、制御回数を同等に維持することが必要でした。
系統運用上は誤差に対して当日に制御量を調整できるなど柔軟な調整が可能ため、オンライン化が望まれてきましたが、制御回数を同等とする必要があり、オンライン化へのインセンティブを確保できませんでした。

公平性ガイドラインの改正(2019年10月)

出力制御の公平性の確保に係る指針(公平性ガイドライン)を見直しが行われました。
「出力制御の上限(年間30日)に達するまでの間は、出力制御低減の観点から、オンライン事業者の制御回数がオフライン事業者より少ない場合でも公平性に反することにはならない」
という変更が行われました。
8/23〜9/21の間でパブリックコメントが実施され、一部修正を経て結果が公表されました。
この変更により、今後出力制御の低減に向けた柔軟な取り組みが実施されていく見込みです。

参考:出力制御の公平性の確保に係る指針

運用方法の見直し

1.制御実施前日の出力制御量算出

旧:最大誤差

旧運用では、「想定される最大の誤差」を踏まえた出力制御量が算出されていました。
太陽光発電が前日予想よりもたくさん発電した際などに、「下げ調整力」、つまり供給が多すぎるときに供給を減らすために調整できる能力が不足しないよう多めの量を算出の上、出力制御指示が行われてきました。

新:平均誤差

今後は「平均誤差」で算出されるため、発生確度が比較的高い出力制御量が算出されることになります。
「最大」から「平均」に変わることで、旧方式と比較し前日に算出される出力制御量は低減します。
これは「太陽光発電が前日予想と比べて発電量が少ない」場合などに、出力制御量を低減するのに役立ちます。
出力制御に関するデータが蓄積されつつあり、なるべく少ない制御量となるよう見直されました。

出力制御量算定の変更

2.制御実施前日の発電事業者への配分

旧:オンライン制御/オフライン制御の制御回数を同等に維持するよう調整

前日に算出された出力制御量に対し、オフライン制御とオンライン制御の各事業者に配分されました。
制御回数が同等となるよう適宜調整がありました。
この場合、オフライン事業者は急に出力制御を取りやめるなどの対応ができないため、
実際の需給状況で「出力制御が不要」となった場合にも、出力制御することになる、という課題がありました。

新:前日指令はオフライン制御に配分、当日足りなければオンライン制御

前日に平均誤差から算出された出力制御量をオフライン制御を優先して各事業者に配分されます。
当日の需給状況から判断し、出力制御量が足りない場合は直近(2時間前)にオンライン制御に対して追加制御を行います。
オンライン制御はこうした当日の制御内容の変更が可能なため、調整用として有効活用されます。

九州電力ではすでに新方式で出力制御実施

2019年10月9日に「出力制御量低減に向けて運用を一部見直します」というお知らせが九州電力WEBサイトに掲載されました。
10月13日、14日に出力制御が実施されましたが、すでに新運用で出力制御指示が出されたようです。

出力制御を行う発電所選定の説明資料も差し替えられています。

2019年10月までの再エネ出力制御における発電所選定のイメージ

出典:九州電力

2019年10月からの再エネ出力制御における発電所選定のイメージ

出典:九州電力

新たな出力制御運用方法の効果は?

九州電力のシミュレーションで、この変更の低減効果を見てみましょう。

出典:九州電力

旧方法では前日の出力制御量算出で
供給(最大誤差考慮):1,333 ー 需要:1,189 = 144万kW
の制御が必要と算出され、オフライン制御:65万kW + オンライン制御:79万kW に配分されました。

当日の実績を見ると、想定より太陽光が発電しなかったなどにより必要な制御量は減少したものの、オフライン制御は当日の変更ができないため制御が実施されました。オンライン制御では出力制御は実施されませんでしたが、最終的に54万kWの出力制御が実施されました。
※オフラインの制御実施が65万kWのところ、日射量の変動により54万kWの制御となりました。

一方、新運用方法でのシミュレーションでは、
供給(平均大誤差考慮):1,238 ー 需要:1,189 = 49万kW
の制御が必要となり、オフライン制御の設備に配分されます。
前日割り当てられたオフライン制御の設備が出力制御を実施すると、当日の日射量などにより41万kW制御することになります。

旧方法では54万kWだったところが41万kWとなり、この日のシミュレーションでは13万kWの出力制御を削減できたといえます。すなわち再エネの活用が13万kW増えたということです。

より確度の高い予測に向けて

新方式でのシミュレーションで効果が見られますが、これで今後の出力制御運用が決まったというよりも、よりよい運用を模索していく中の一つのステップと言えます。
実際の運用実績の蓄積や、より高度な気象予測は、より確度の高い予測やよりよい運用方法の検討に役立ちます。
再エネをなるべく効率よく上手に使えるようこれからも引き続き注視していきたいと思います。

参考

※本記事の情報は投稿した時点のものであり、閲覧されている時点で変更されている場合がございます。あらかじめご承知おきください。