これまで、FIT価格が高値に設定されていた20kW以下の「小型風力発電」。
それが2018年度から大型の風力発電と同じ区分で取り扱われるようになり、これまで「小型風力発電」と呼んでいた設備のFIT価格は大幅に低下することになりました。
なぜ、小型風力という区分がなくなったのでしょうか。ここでは、その理由についてご紹介していきます。
これまでは買取価格が高かった小型風力
20kW以下の陸上風力発電(以下、小型風力発電)の買取価格は、2017年度までほかの再生可能エネルギーと比べ高く設定されていました。
発電種別 | 2017年度調達価格 |
---|---|
太陽光発電 10kW以上2,000kW未満 |
21円+税/kWh |
中小水力 200kW未満 |
34円+税/kWh |
地熱 15,000kW未満 |
40円+税/kWh |
バイオマス 2,000kW未満の間伐材等由来の木質バイオマス |
40円+税/kWh |
陸上風力 20kW以上 |
21円+税/kWh (2017年9月末までは22円+税/kWh) |
陸上風力 20kW未満 |
55円+税/kWh |
上記のように、小型風力発電の買取価格は非常に高く設定されていました。これは、風力発電に対する期待が高かったことから、小型風力発電の普及を意図した国の方針によるものでした。
参考記事:小型風力発電の買取価格はなぜ高い?
調達価格等算定委員会での議論の内容
2017年度の買取価格を算定・議論する調達価格等算定委員会でも小型風力発電のFIT制度から自立可能性について議論がされていましたが、そこでは「設置期間が短く、集まっているデータも少ないため、あらかじめ3年間の買取価格を設定しない」とされていました。
2018年度の調達価格等算定委員会では、議論に必要なデータが集まったとして、再び小型風力発電のFIT制度からの自立化について話し合いがされたのです。
同委員会で指摘された項目は以下の通りです。
・設備利用率の中央値が7.6%と、想定していた16.7%と比べて低い
・そのことから算定されるFIT価格(投資回収可能な価格)は120円/kWh
・外国では小型風力という区分を持っていることが少なく、持っていたとしても10~30円台と低価格である
・資本費の中央値は128万円/kWと想定値と同水準で低減傾向にない
・運転維持費の中央値は1.8万円/kWと想定より高い
これらのことを踏まえると、小型風力発電の買取価格と発電コストは高止まりしていると言えます。また、同委員会で行われた日本小形風力発電協会からのヒアリングでは「2030年小形風車の発電にかかるコストは30円/kWhを下回る」という意見も提示されましたが、仮にそうできたとしても、「現段階(委員会が開催された当時)の電力市場価格に鑑みると、一般的な用途としてFIT制度からの自立化は難しい」とされました。
その結果、「自立化が難しい小型風力発電の買取価格を55円/kWhという高値に設定し続けるのは適当ではない」という結論に至ったのです。
資源エネルギー庁による経過措置
前項で紹介した委員会による決定で、風力発電に関して、小型風力と大型風力の区分がなくなり、小型風力発電による買取価格は、それまでの半分以下にまで下落することになりました。この急激な価格変更に備え、国から経過措置が取られています。
経過措置の概要は以下のようになります。
【20kW未満の風力発電設備の新規/変更認定に対する経過措置】
20kW未満の風力発電設備(小型風力発電)は2018年度から大型の風力発電設備と同価格区分として扱われることになりましたが、2018年4月1日までに認定を受けていれば2017年度の調達価格を適用することができます。
しかし、以下のすべての要件を満たしている場合に限り、実際に認定された日が2018年4月1日以降であっても同様の経過措置を受けることが可能です。
- 2018年2月28日までに新規/変更認定申請を行った
- 申請時に土地の使用権原を証明する書類を含めてすべての必要書類(接続の同意を証明する書類の写しを除く)が添付されている
- 2018年2月28日までに電力会社に接続契約の申込みを行って、それが不備なく受付されている
- 2018年7月31日までに電力会社との接続の同意を証明する書類を提出する
これらの案件については、運転開始期限が設定され、4年以内に運転を開始する必要があります。
参考記事:20kW 未満風力発電の新規・変更認定の経過措置について | 資源エネルギー庁
2018年度よりFIT制度においての小型風力発電という区分はなくなりましたが、設置面積が比較的小さくてすみ、風さえあれば夜でも発電できるという魅力もあります。
今後も小型風力発電は、
- 発電した電力を使う自家消費型の発電設備
- 災害時の電源
- 離島など電気を通すのが困難な場所の独立型電源
といった用途で活躍することが期待されています。