自己託送とは?

自己託送とは、資源エネルギー庁「自己託送にかかる指針」資料によると
“自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を、一般電気事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該時価小発電設備を設置する者の別の場所にある工場などに送電する際に、当該一般電気事業者が提供するサービスのことである。” とあります。

簡単に言うと、電力会社の送配電ネットワーク(電線など)を利用して、自家発電設備で発電した電力を、発電設備所有者が所有する別の場所で消費できるよう送電するサービスのことです。

平成25年(2013年)11月13日成立、同20日公布の「電気事業法の一部を改正する法律」で制度化されました。

自己託送イメージ

出典:第2回 制度設計ワーキンググループ事務局提出資料~自己託送の制度化について~

なぜ「自己託送」が注目されるのか?

2013年ということで、ずいぶん前に制度化された印象がありますが、なぜ今注目されるのでしょうか。

自家消費太陽光発電の拡大

自家消費型太陽光発電は、太陽光発電のコストが低下し、経済的メリットが大きくなっています。またCO2削減など環境貢献の上でもメリットが大きく、導入が拡大しています。
しかし電気を消費する場所が太陽光発電に適しているとは限りません。
離れた場所の発電設備の電力を使うために自営線を敷設すれば、距離により莫大なコストがかかります。
自己託送制度のおかげで、現実的なコストで発電適地から消費地へ電気を融通でき、効率的な自家消費が見込めるというわけです。

野立ての低圧太陽光発電による全量売電はできなくなった

2020年度から固定買取価格制度が大きく変わり、低圧の太陽光発電は自家消費型のみが認定されるようになりました(ソーラーシェアリングを除く)。
遊休地に設置するいわゆる野立ての太陽光発電の新たな活用方法として注目を集めています。

自己託送を利用する条件

資源エネルギー庁「自己託送にかかる指針」資料を読み解いてみましょう。
1.電気事業の用に供する電気工作物以外の発電用の電気工作物(非電気事業用電気工作物)を設置する者
=「電気事業の用に供する電気工作物」とは売電するための発電設備ということなり、売電用ではない自家用発電設備を設置するケースが対象となります。

2.当該者と「経済産業省令で定める密接な関係を有する者が設置する非電気事業用電気工作物」を用いて発電した電気
=需要家が所有する自家用発電設備に加えて、密接な関係、グループ企業などが所有する自家発電設備にて発電した電気が対象となります。

自己託送条件、密接な関係とは

出典:第2回 制度設計ワーキンググループ事務局提出資料~自己託送の制度化について~

自己託送制度見直し(2021年11月)

需要家の脱炭素化への取り組みが活発になるなか、屋根上に太陽光発電を搭載して自家消費するだけでなく、遠隔地にある再エネ電源から電力調達するニーズが高まりました。
再エネのさらなる導入拡大を目指すため、自己託送制度が2021年11月に見直され、自己託送のための条件が緩和されました。
「発電設備を維持し運用する者」と「送電先」は密接な関係(資本関係があること等)が必要ですが、改正により、資本関係等がなくても、組合を設立し一定の要件を満たすことで密接な関係を持つとみなされ、自己託送を可能となりました。
参考:電気事業法施行規則の一部を改正する省令案並びに「自己託送に係る指針」の全部改正に対する意見募集の結果について|e-Govパブリック・コメント

密接な関係があるとみなされる「組合」とは
供給者と相手方が共同して組合を設立する場合であって次に掲げる要件に全て該当する場合
① 当該組合の組合契約書において、当該組合が長期にわたり存続する旨が明らかになっていること。
② 当該組合の組合員名簿等に当該供給者及び当該相手方の氏名又は名称が記載されていること。
③ 当該組合契約書において電気料金の決定の方法及び当該供給者と当該相手方における送配電設備の工事費用の負担の方法が明らかになっていること、(後略)
④ 当該組合の組合員が新設した、自ら維持し、及び運用する電気事業者による(中略)再生可能エネルギー発電設備(同条第5項に規定する認定発電設備を除く。)その他原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源を電気に変換する設備及びその附属設備による電気の取引であること。
自己託送に係る指針(令和3年11月18日)

自己託送サービスの料金は?

託送料金は電力会社や契約種別により異なります。
たとえば東京電力の場合は以下の料金になります。(従量接続送電サービスの場合、2020年7月時点)
低圧電灯:10円97銭/1kWh
低圧動力:16円71銭/1kWh
高圧:11円45銭/1kWh
特別高圧:7円52銭/1kWh

自己託送のメリット

CO2排出量を減らせる

自己託送した電力の消費は、自家消費と同じ扱いです。CO2削減のために自家消費を増やしたいけれども、需要地の条件によっては増やすのが難しい場合もあります。
たとえば、

  • 自社の建物、敷地内への太陽光発電の設置容量も限界がある。
  • 海岸線に近く塩害対応が必要である。
  • 各拠点で発電電力が余るところ、足りないところ、まちまち。

といったケースでも、
離れた場所に所有する発電設備から自己託送をすることで、自家消費量を増やしたり、拠点間で融通できることで企業やグループ全体のCO2排出量を減らすことができます。

電力コストを削減できる可能性も

自家消費ですので、再エネ賦課金は必要ありません。
2020年度の再エネ賦課金は1kWhあたり2.98円で、今後しばらくは上昇する見込みです。
離れた場所に設置した太陽光発電設備の電力を自家消費できることで、発電条件のいい場所への設置ができることもあり、発電コストや管理コストを抑えることができれば電力コストの削減につながります。
また将来の電気代上昇リスクを抑えることができます。

自己託送の注意点

「計画」と「実績」がずれるとペナルティも

自己託送を利用する際には、30分単位の「送電量計画」を立てる必要があります。
予想が難しい自然エネルギーを利用するため計画通りの送電量にならないことも考えられますが、そういう場合にインバランス料金というペナルティが課せられます。
送配電事業者ごとに異なりますので、利用の際には確認が必要です。
※2022年度からは新たなインバランス料金制度が開始される予定です。

参考:自己託送に係る指針 | 資源エネルギー庁

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