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太陽光発電をはじめとする風力発電や地熱発電など、再生可能エネルギーによる発電の普及が急がれています。しかし一方で、発電した電力を消費地に送るための送電網が不足していることも大きな課題です。「なぜ送電網を拡充しないのか?」「できないのか?」「送電技術の課題は?」など、送電網不足の現状と増やせない理由を紹介します。

送電網不足の現状

従来の送電網は、電力会社が運営している原子力発電所や火力発電所などから消費地に送電するために整備されてきました。送電網不足は、大きく「発電所から変電所への連系」と「地方と大消費地との連系」において起こっています。

発電しても変電所まで送電できない

再生可能エネルギーの電気を受け入れる変電所の容量が小さいため、発電設備の拡張が難しくなっています。発電業者が別の変電所に接続する場合は、変電所までの送電設備を自己負担しなければなりません。送電網の整備には、送電線の建設コストや維持管理の負担を軽減することが必要です。また、送電線容量の限界が、再生可能エネルギーへの新規参入の大きな障壁となっています。

再生可能エネルギーの適地と消費地が離れている

大規模な産業用太陽光発電所や風力発電所、地熱発電所の建設は、安くて広い土地が確保でき、気候条件に恵まれた地方が適しています。そのため、再生可能エネルギーによる発電量の増大は、北海道・東北・九州が中心です。しかし既存の送電網の容量に余裕がなく、接続が困難なため、電力大消費地への送電が十分にできない状態が起きています。

送電網の技術的課題

送電網不足の解決には、「東西(50Hz/60Hz)の周波数の違い」「送配電ロス」など、いくつかの技術的な課題があります。

送電・配電技術の開発

送電系統の円滑化
広域系統運用により異なった周波数を調整する「周波数調整力」を、全国レベルで行えるような技術の開発を行います。

配電系統の効率化
各需要家への配電は、電圧変動制御やスマートメーターの活用など、大規模需要から家庭需要までのトータルな制御システムの開発を行います。

送配電ロス率の低下へ

電気が送電線や配電線を流れる場合、その電気抵抗によって一部の電気エネルギーが熱エネルギーに変換されてしまいます。このときのエネルギー損失を「送配電ロス」と呼びます。「送配電ロス率」は、送電線により失われる電力量と発電する電力量との比率のことで、国内の送配電ロス率は約4.8%(2010年度:電気事業連合会)です。送電ロスは、送電線の距離が長いほど大きくなります。送配電ロスを減らすためには、より抵抗値の低い電線や変圧器の開発と導入、最短コースを選べる送電線網の算定が必要です。

効率的な送電網システムの構築へ

再生可能エネルギーの普及には送電網の強化が求められますが、遠隔地への送電ロスも考慮しなければなりません。大消費地への大規模送電と、効率のよい電力の地産地消など、電力融通の仕組み構築が日本の効率的な電力づくりに不可欠です。

参考:

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