img01

2016年4月から、いよいよ一般家庭向けの電力小売が自由化され、誰でも電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります。続々と新電力会社が参入し、各社がセット割やポイント制など各々の特徴を生かしたサービスを発表していますが、実は、どの新電力会社も電気料金単体で一気に極端な値下げをすることはしたくてもできません。その理由は、「託送料金」の存在があるからです。そこで、今回は、この託送料金についてご紹介します。

「託送料金」の意味

ひと言でいうと、託送料金とは、“電気を送る際に電力会社が必ず利用しなければならない「送配電網の利用料金」のこと”です。既存の大手電力会社も新電力会社も、全ての電力会社が、送電線網を利用する際には“共通の義務”として、各社が売った電気の量に応じて、地域ごとに決まっている託送料金を負担しなければなりません。   

小売全面自由化後の電気料金の仕組み(参考:経済産業省)

小売全面自由化後の電気料金の仕組み(参考:経済産業省)

昨年の12月にこの託送料金は設定されましたが、今後「託送料金の値上がり」が行われると、電気料金も自ずと値上がりします。

電気料金の内訳(参考:経済産業省)

電気料金の内訳(参考:経済産業省)

託送料金は、10電力会社により設定されます。各地域エリア内での各電力会社への給電指令や送配電ネットワークの運用等を、現時点では、10の電力会社が全て担っているからです。

託送料金決定までの経緯

経済産業省が昨年の12月18日、電力10社の「託送供給等約款」を認可したことで、2016年4月から適用される託送料金が正式に決定しました。託送供給等約款とは、“電力会社が所有する送配電設備を、発電事業者や他の電力小売り事業者が利用する場合の料金等の供給条件を定めたもの”です。

料金が決定するまでの経緯としては、まず電力会社10社は、2015年の7月末に、現行の託送供給約款へ、2016年4月に実施される電力小売の全面自由化や国の審議会における議論の内容を織り込んだ各種法令の改正等を反映し、

  1. 低圧向け託送料金の新設
  2. 高圧・特別高圧向け託送料金の見直し
  3. インバランス制度の見直し
  4. 割引制度の見直し

の4点の見直しを行いました。

その後、電力取引監視等委員会における厳正な審査を経て、2015年12月11日に経済産業省として査定方針をまとめ、申請された託送料金を値下げする等の修正を求めます。それから電力会社からこの指示を踏まえた補正書の提出があり、2015年12月18日に同省は認可を行ったのです。

その間、経済産業省は、徹底した情報公開と共に透明性の高いプロセスが重要であることから、電力会社10社から受理した託送供給等約款の認可申請に対する意見募集を同省のホームページにより開始。約150件の意見を参考にしたといいます。

「託送料金」決定額

決定された託送料金の種類は、2016年4月から新たに自由化する家庭・商店向けの「低圧」のほかに、すでに自由化されている企業・自治体向けの「高圧」と「特別高圧」に分かれます。さらに契約タイプや時間帯別の料金プランで差があります。

今回認可された託送料金の“1kWhあたりの平均単価”は、東京電力で低圧向けが『8.57円』、高圧向けが『3.77円』、特別高圧向けが『1.98円』、中部電力で低圧向けが『9.01円』、高圧向けが『3.53円』、特別高圧向けが『1.85円』、九州電力で低圧向けが『8.30円』、高圧向けが『3.84円』、特別高圧向けが『2.09円』等となっています。国が各社に出した修正指示の金額を見ると、地域による差が大きいこともわかります。特に注目の低圧向けでは北陸と関西電力が1kwhあたり『7.81円』で最も安く、最も高いのが沖縄電力の『9.93円』、次いで東北が『9.71円』と続きます。

2016年4月からの1kWhあたりの託送料金単価一覧(参考:経済産業省)

2016年4月からの1kWhあたりの託送料金単価一覧(参考:経済産業省)

定期的な「託送料金」の見直しの必要性

民間からの意見も踏まえ厳正な審査を受けて、設定された託送料金ですが、2015年の秋、経済産業省より行われた調査のうちで“企業向けの高圧や特別高圧に比べて家庭向けの低圧の託送料金が高い”という点についての不満が多く見られました。
参考:「電力会社(10社)の託送料金認可申請」対する意見募集の結果について

10社の託送料金を単純平均しても、特別高圧や高圧に比べ、低圧は2倍以上の価格になっている電力会社が、大半です。電力を個々の家庭まで配電するコストが企業向けと比べ高くなるとはいえ、コストの配分方法に不明瞭さが多いとの指摘があることも、また事実のようです。

例えば、小売りの全面自由化に伴い託送料金原価が、増える要因のひとつとして、電力会社が安定供給のため必要とする「調整力コスト」があります。電力の需給バランスをとる役割を電力会社の送配電部門が担っているために発生するコストですが、この費用は新たに今回より託送料金に含まれたのです。

調整力コストによる託送料金原価の増減の図〈注:「0」は金額を算出したもの有効数字未満の場合を表す〉(出典:経済産業省)

調整力コストによる託送料金原価の増減の図〈注:「0」は金額を算出したもの有効数字未満の場合を表す〉(出典:経済産業省)

調整力コストは、実績値をもとに事後評価することが可能なため、以後からは、適切で公平な申請が行われるように、各10社は毎年の国によるチェックを受け、都度、是正が必要な場合には、料金を訂正していく必要性があるでしょう。

「託送料金」と「発送電分離」の関係

政府は、2020年を目処に「発送電分離」を行い、この発送電分離が行われたタイミングで、電力会社は3つの会社へ分社化する予定です。現在一体化している「発電部門」・「送電配電部門」・「小売り部門」の3部門が各々別会社になるのです。送電配電部門は「送電配電会社」となり、送電・配電設備を所有・運用したり、新規の送配電設備の計画や建設も行います。

発送電分離を行う目的は、各事業者の目的を明確に分け、発電会社や新規参入の事業者がより平等に送配電ネットワークを使えるようにすることです。多様な発電会社が参入し競争が働くことで、消費者の選択肢が増えることが望まれています。

ただ、現在と同様、電力10社の地域独占での事業運営を認める仕組みは今同様に残されます(ただし、託送料金を国が厳しくチェックする機能もそのまま随行されます)。2020年を目処に、発送電分離が行われた時、託送料金の設定を含め今よりも平等な電気の料金設定ができるようになるのか否か、その動向をしっかり見守っていきたいものです。

参考: