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電気は使う分を大量に貯蔵しておくことはできません。その一方で、朝、昼、晩と人の動きによって、電気の利用量は目まぐるしく増減します。電力会社はその増減に合わせて発電を実施しなくてはなりません。電力会社はどのように電気の発電量を調整しているのでしょうか。その際に用いられるのが揚水発電です。
今回は揚水発電の仕組みや必要性について解説します。

揚水発電の仕組み

揚水発電は水力発電方式の発電法です。揚水発電の目的は電気を水に置換え、貯蓄できない電気を貯蓄することにあります。
電力需要の少ない時間帯に、下部貯水池(下池)から上部貯水池(上池ダム)へ水を汲み上げ、電力需要の多い時間帯に上池ダムから水を下池へと落とすことで発電します。(下図参照)

揚水発電のしくみ

揚水発電のしくみ

上池ダムへ河川の流入があるものを「混合揚水発電」、上池ダムへ河川の流入がほとんどないものを「純揚水発電」と分類されます。
日本国内では、混合揚水発電、純揚水発電を合わせて、現在50基ほどの揚水発電所があります。最大のものは出力が約2GW(ギガワット)ほどにもなり、これは大規模な火力発電所や原子力発電所にも匹敵する容量です。

揚水発電の必要性

1. 他の設備稼働率の向上

電力は基本的に貯蔵ができないので、仮にピークの時間が僅かであっても、電力会社はそのピークに対応できる発電設備を保有しなくてはいけません。ところが、ピークに備えた電力設備は大部分の時間で利用されないため、設備利用率は低くなります。
設備投資の削減の観点からもピークとオフピークの差は小さいことが望ましいです。揚水を用いることでそれが解消できると考えられます。
まず、設備利用率が悪化する時間帯に既存発電設備の発電する電力で水をくみ上げます。需要がピークとなる時間帯にくみ上げた水で発電を行うことで、ピークとオフピークの差を埋めることができるのです。こうした流れで設備利用率の全体的な向上が図れます。これは太陽光発電のように昼しか発電ができない発電所が増えても有効です。

2.調整用発電所としての利用

電力会社は常に変動する電力需要に対応するため発電量を調整する必要があります。揚水式発電所は短時間での起動停止が容易で負荷に対する追従性も高いため、調整用発電所としても利用することが可能です。電力系統が他国から独立し、電力需要のピークとオフピークの差が大きい日本において特に普及しています。

出力制御と優先給電ルール

発電量が多すぎると送電網に大量の電気が流れ込み、周波数が乱れて急激に上昇します。すると発電所の発電機がダウンし、他の発電所にも連鎖して大規模停電につながりかねません。
こうした事態に備えて、どの電力を優先的に使用するかを決めた「優先給電ルール」があります。需要に対して供給が上回りそうな場合は、このルールに沿って電力が使われます。
ここで最初に出力制御される電力が揚水発電です。
その次に制御されるのが火力発電となります。太陽光発電においては優先順位が高く、個別の電力順では最優先の原子力等の次に当たります。
揚水発電は電力の調整弁となる働きをしていて、発電量調整の難しい再生可能エネルギーの利用を考える上でも非常に重要となります。

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このように揚水電力は日本の電力供給を陰で支えている存在です。
様々な種類の発電所がありますが、それぞれの特徴を活かし、電力の安定供給に役立てられます。バランスよく電力供給することが今後も求められるでしょう。