温泉イメージ

日本は世界第3位という地熱資源を持っていますが、地熱エネルギーの活用はまだあまり進んでおらず、国内における地熱資源の発電への利用はわずか2%に過ぎません。
今回は、従来の地熱発電に比べて参入ハードルが低く、地熱資源の有効活用につながると期待される「温泉発電」についてご紹介します。

開発が進まない日本の地熱発電

地熱発電は、季節や天候に左右されることなく安定した稼働が可能で、燃料費もほとんどかからないため、活用しない手はないのですが、開発費用が高い、地熱資源が国立公園内にあることが多い等といった理由で、日本での導入は多くありません。

しかし、近年バイナリー発電による小規模な地熱発電「温泉発電」が広がりを見せています。

参考記事:日本で地熱発電が進まないのはなぜ?

バイナリー発電のしくみ

温泉発電で利用される発電方式「バイナリー発電」の仕組みを簡単にご紹介します。

熱を水よりも沸点が低い代替フロンやアンモニアなどの媒体へ熱交換して蒸気を発生させ、その蒸気圧力によってタービンを回す発電方法です。

地熱によって生成される蒸気を使ってタービンを回す従来の地熱発電では、150℃以上の高温・高圧の熱水や蒸気が必要ですが、低沸点媒体の蒸気を使うバイナリー発電では150℃以下の熱源でも発電することが可能です。
温泉バイナリー発電では、低沸点媒体として代替フロンが使われることが多く、その沸点は約15℃。100度以下の温水でも沸騰させることができるのです。

蒸気となった低沸点媒体は、冷却・凝縮によって液体に戻り、再び発電に利用されます。

加熱源と低沸点媒体の2つの熱サイクルを使うことから、英語で「2つの」を意味する「バイナリー」発電という名称が用いられています。

バイナリー発電のしくみ

出典:資源エネルギー庁 | なっとく再生可能エネルギー

温泉発電のメリット

開発コストが比較的低コストで、開発期間が短い

低温で発電できることから、従来の地熱発電のような探査や深い掘削が不要となるため、比較的低コスト・短期間で運転を開始できることが大きなメリットです。

既存の温泉との共存も可能

従来の地熱発電では「地熱発電によって温泉が出なくなるのではないか」といった心配の声があり、導入の障壁となることがあります。
温泉バイナリー発電であれば、既存の温泉の熱から発電した後の温水を浴用のお湯とすればよく、温泉の枯渇等の心配も少ないことが利点としてあげられます。

また、源泉の温度が50度以上と高い場合、そのままでは浴用に利用できず冷ます必要があります。
この冷ます熱をバイナリー発電で利用して発電、適した温度まで冷めたお湯を浴用に使う、という一石二鳥のエネルギー活用ができるのです。

採算性

「温泉発電」は、日照や天候に左右されず、24 時間、年間を通して安定した発電が可能です。そのため、同じ出力の太陽光発電の5~7倍の電力を発生することが可能と言われています。

例えば、50kWの温泉バイナリー発電の場合、売電電力量は、年間300,000kWh程と言われています。
固定価格買取制度で売電する場合、15,000kW未満の地熱発電の買取価格は40円+税/kWh(2015年時点)ですので、年間1,200万円程度の売電収入となります。

買取価格の高さという追い風に加え、バイナリー発電機の製品開発も進んでおり、温泉の条件や規模によりますが、発電事業として採算が取れるところまで環境が整ってきています。

温泉発電の活用事例

長崎県雲仙市に「小浜温泉バイナリー発電所」があります。

小浜温泉では、約100℃の温泉が、1日1万5千トンが湧出していますが、その70%の温泉水または熱が未利用のまま海に捨てられていました。こういった利用温泉熱を活用したバイナリー発電の実証運転(環境省事業)が、2013年4月から2014年3月までの約1年間実施され、現在は固定価格買取制度を利用した売電事業を開始しています。

参考:小浜温泉エネルギー活用推進プロジェクト

日本一の「おんせん県」大分県でも、別府温泉や湯布院で複数の温泉発電が運転を開始しています。
大分県にある西日本地熱発電株式会社が、源泉を借りて発電設備をつくる「噴気レンタル事業」を行っており、温泉発電が進む要因となっています。
地熱発電設備の初期投資は大きなハードルですが、源泉のオーナーは源泉を貸すことでレンタル料金を得られ、保守・管理の手間もないため、活用できていなかった地熱エネルギーを活用しやすくなりました。

参考:西日本地熱発電株式会社

温泉発電の課題・注意点

天気に左右されず、24時間365日発電できるとなれば、全国各地の温泉で発電を行えばいいではないか、というところですが、どんな温泉でも発電ができるのでしょうか?

低沸点媒体が15度程度で発電するとはいえ、事業性の面で見ると、80度以上の高温と十分な量の熱水が必要になります。
また、低沸点媒体の冷却が必要なため、そのための水の確保も必要です。
熱水と冷却水が安定して得られることが温泉発電ができるかどうかの条件といえるでしょう。

また売電には送電線が近くにあることも必要となってきます。

メンテナンスは欠かせない

温泉には様々な成分が含まれており、沈殿し「湯の花」と呼ばれたりしますが、放置すると配管内に固着してしまいます。これは「スケール」と呼ばれます。
発電効率が落ちるなどの弊害があるため、配管のスケール洗浄および修繕工事などメンテナンスは必須となるでしょう。

事業実現のための調整力が必要

温泉は多くの人が利用している場合が多く、利害関係者も多数にわたるため、権利関係や利害関係の調整が必要となるでしょう。
必要な様々な手続きや、規制への対応の負担もあり、事業実現のためのノウハウが求められています。

期待される「温泉発電」

地熱資源が豊富な日本。
地熱発電は深い掘削が必要であったり大規模な発電設備が必要だったりと、コストや時間がかかります。また大規模さゆえに周辺の環境への影響も懸念され、地熱発電所をどんどん増やすのも難しい状況です。

日本のエネルギー自給率は6%(2012年時点)と、海外の資源に大きく依存しています。
地熱資源の活用方法の1つとして「温泉発電」の普及に期待したいところです。

参考: